世界が驚いた色彩「色の復元」

ミケランジェロ「リビアの巫女」システィーナ礼拝堂
ミケランジェロ「リビアの巫女」システィーナ礼拝堂

近年行われたミケランジェロのシスティーナ礼拝堂(ヴァチカン)の修復は、美術界に大きな論争を起こしました。

ミケランジェロ(1475-1564年)は彫刻家として有名で、修復前の暗い色彩は、「絵画的ではなく、むしろ彫刻的である」と言われてきました。また、色彩センスは、その「憂鬱質の性格」が反映しているとも考えられていたのです。

しかし、修復後は、そのような推測はまったく間違いであったことが明らかになりました。

修復後のリビアの巫女が示すように、ミケランジェロは優れた色彩画家でもあり、むしろ鮮やかな色の開拓者であったのです。

多くの絵画は、何世紀にもおよぶ汚れで、一般に絵画の色彩は、当時のものよりも暗くなっていることが多いのですが、それだけではなく、「補筆」によって、まったく異なった色彩になっていることも少なくありません。

例えば、19世紀の収集家たちは、自分が持っている絵に「レンブラント作品のような暖かく暗い色調」に彩色することを好んだりもしました。

しかし、20世紀の終わりから21世紀、最新の科学技術によって当時の顔料を分析し、作品が描かれた当時の状態を復元することが可能になってきています。