世紀末を象徴するシーレの茶褐色、橙(希望の光)と黒(死)

エゴン・シーレ「枢機卿と尼僧」
エゴン・シーレ「枢機卿と尼僧」

⇧緋色(ひいろ)の衣を着た枢機卿が、黒衣の尼僧に迫る、ショッキングなこの抱擁の絵は「エゴン・シーレ」という画家の描いた作品です。

「赤×黒の対比色」の周りを「シーレの褐色」が覆いつくしています。

 

エゴン・シーレは、19世紀末から20世紀初頭にかけて短くも濃密な時間を駆け抜けたウィーン生まれの画家です。

3歳のときに姉を亡くし、14歳のときに父を梅毒で亡くしました。

少年期のこの体験は、彼の心象に深い影を落とし、「生と死」「性(エロス)」は、彼の終生のテーマとなります。

 

シーレは同じ世紀末に活躍していた「ウィーン分離派」の巨匠クリムトに出会い、多くの影響を受けます。

2人に共通なのは、ウィーン、世紀末、エロスでしょうか。

 

しかし、色彩は異なります。

クリムトが、「輝く黄色と華麗な色彩」でエロスの世界を豊穣に描いたのに対し、シーレは、褐色や、黒灰色の男女の肉体が、抱擁しあう姿を執拗に描き続けました。

 

 

  

エゴン・シーレ作
エゴン・シーレ作
エゴン・シーレ「自画像」
エゴン・シーレ「自画像」

シーレにとって、黒と茶褐色は「死」を象徴する色でした。

 

次は、シーレの言葉です。

◯美しいものを形にし、色彩の野原を作りたい。

◯1コのオレンジがただひとつの救いだった。

◯ぼくが眠っている場所の絵を描いた。不潔な灰色の毛布の中央にヴァリー(恋人の名)がもってきた鮮やかなオレンジが1個置かれている。ただひとつ輝く光だ。この小さなアクセントは、ぼくをたとえようもなく幸せな気持ちにしてくれる。

 

オレンジ色は「光の色」であり、絶望の人生の中で、燦々と光輝く色。そして「欲求不満の色」ですね。

 

黒褐色の色相はオレンジ色です。オレンジが煮詰まった先が褐色なのでしょう。オレンジ色は「これが欲しい、あれが欲しい、しかし手に入らない」という心境の色。

もしかしたら、シーレは「死を渇望、死を欲求していたのでしょうか?」

 

 

もうひとつ、ヒミツの色の講座・・

 

色の深層心理では、「黒×茶色」に執拗にこだわる人は、幼少期、極度の孤独などを経験し、その影響で、大人になっても、その欠落を埋めようと、性格的に問題(例えば、万引きを繰り返すなど)を抱えてしまう場合がある、という報告があります。

実は、このことは、人権上の問題で、あまり公にはされません。

 

色の研究が発達したドイツなどでは、面接官がこのことを考慮する事もあるそうです。

 

「黒×茶色」はおしゃれでモダンな配色ですが、「執拗にこだわる」のが問題です。

 

フランスの偉大なデザイナー、ココ・シャネルは、デビュー当初「黒×茶色」の配色をこよなく愛しました。彼女は幼少期、母が病死、父に捨てられ、孤児院で孤独に過ごしたことは有名ですね。

 

 

 

エゴンシーレ
シーレ作「自画像」
エゴンシーレ
シーレ作

クリムト
クリムト作「接吻」1907年