色をド派手に見せるには、正反対の色を並べるのが基本ですね。このことを一番良く知っていたのは、古(いにしえ)の人々でした。
なぜなら、人工顔料も、化学染料も無い時代、好き勝手に華やかな色、高彩度の色を得ることは難しく、そのために、もっとも引き立てあう色の組み合せを、人々が経験から学んでいったからでしょう。
例えば、奈良時代の仏教彩色について
紺丹緑紫(こんたんりょくし)と呼ばれる色の原理があります。
使われた色の基本は5色
◆紺(こん)・・群青色
◆丹(たん・に)・・橙色
◆緑(みどり)
◆紫・・臙脂(えんじ)
◆朱(しゅ)
この5色は当然ながら、2組の補色より成り立つ配色でした。
◆緑(PCCS12番)と臙脂系のピンク(PCCS24番)
◆群青(PCCS18番)と丹(PCCS5番)
とそれぞれ補色関係のペアで成り立っています。
(色相差は色相番号12差が最大でこれを補色という)。
今は地味に思える寺院の中には、創建当時は、度肝を抜く彩色のものが多くありました。
次は、有名な奈良の東大寺の大仏殿を復元したものです。
これは、大仏殿を下から見上げたときの彩色です。
これらの色は、決まった色の呼び名があります。
◆赤(黄みがかった赤)・・朱
◆緑・・・・緑青(ろくしょう)
◆ピンクっぽい赤・・・臙脂色(えんじいろ)
◆青・・・紺(こん)、群青(ぐんじょう)
◆橙っぽい色・・・丹(たん)
◆一番左
群青、紺のグラデーション
◆左から2番目
丹のグラデーション
◆左から3番目
緑青のグラデーション
◆左から4番目
臙脂色のグラデーション
※グラデーションのことを日本では繧繝彩色(うんげんさいしき)と言います。
西洋で色相環や補色という考え方が生み出され、印象派やロマン派の画家たちが、その影響を受けましたが、その1000年以上も前から、日本では、色相環などという考えは無かったものの、経験的に互いを引立て合う色を知っていたのです。