卒業式シーズンに見る海老茶式部

卒業式シーズンになり、袴姿の女性を見る季節になりました。

花火大会、成人式、卒業式

の日本女性が和服に親しむ3イベントの中でも、

卒業式の袴姿は「教養のある日本の女性の凛とした美しさ」を象徴するものです。

 

そもそも女性の「袴」は椅子に座って、勉学に勤しむときに裾が乱れるという理由でした。

以下のような紆余曲折がありました。

1.着流しの着物は授業を受ける際、裾が乱れるとの理由で、男袴の着用へ。

2.袴は男性のものだと反対が多く、明治16年廃止。鹿鳴館(ろくめいかん)の影響などで洋装へ。

3.明治22年、国粋主義の流れから洋装廃止。再び、スカート状袴へ。

 

 

当時、華族女学校が採用していた紫色の女袴(ちょうちんハカマ、股がないスカート状の袴)の色を替え、明治30年代半ばに定着したといいます。


ちなみに、紫は当時華族が用いる高貴な色で、そのままでは畏れ多いことから紫はタブーとされ、それに代わる色として海老茶色が愛されました。

海老茶(えびちゃ)とは、伊勢エビの殻のような色を指します。それを

紫式部にひっかけて、「海老茶式部(えびちゃしきぶ)」と呼ばれました。

この配色は、上記の大正時代の袴と上下が逆になったような、定番の配色ですね。

例えば、臙脂色(えんじ、濃い赤系)の着物に、紺(濃い青)の袴を合わせるのは、色相に変化を持たせ、色調はいずれも、濃い、暗い色同士にします。

そこに、小物と半襟の色を明るい色にして、アクセントカラーのようでもあり、セパレートカラーのように用います。

 

 

【問題A 臙脂×紺】

この着こなしに当てはまるのはどちらでしょうか?

 

1.色相は類似の調和、トーンは対照性の調和

2.色相は対照の調和、トーンは共通性の調和

 

 

【解説A】

着物は臙脂色の地色(赤紫24〜1番)

袴は濃紺(青18〜19番)

互いに対照色相

(*ただし、袴の青にはやや赤みがあるので、色相のコントラストは補色のように正反対のものではない)

 

着物の地色は濃い色調(dpトーン)

袴は暗い色調(dk トーン)

しかも共に暗清色なので共通性が感じられる。

 

【答えA】

2.色相は対照の調和、トーンは共通性の調和

 

 

 

 

【問題B 朱色×常磐緑】

この着こなしに当てはまるのはどちらでしょうか?

 

1.色相は類似の調和、トーンは対照性の調和

2.色相は対照の調和、トーンは共通性の調和

 

【解説B】

着物は朱色が地色(3番黄みの赤)

袴は緑(12番)で対照色相

 

【答えB】

2.色相は対照の調和、トーンは共通性の調和

 

 

同上【海老茶×深緑】

この着こなしに当てはまるのはどちらでしょうか?

 

【問題C】

1.色相は類似の調和、トーンは対照性の調和

2.色相は対照の調和、トーンは共通性の調和

3.色相は類似の調和、トーンは共通性の調和

 

【解説C 若紫×薄紅】

着物の色は若紫色(色相-紫、22番)

袴の色は薄紅色(色相-赤紫、24番)

 

【答えC】

3.色相は類似の調和、トーンは共通性の調和

 

 

問題C「若紫×薄紅」の配色は、洋服の着こなしルールを着物に持ち込んでいます。

それは、色相が類似だからです。

「色は華やかだけど、配色としては地味」

になってしまっています。むしろ着物は

「色は地味だけど、配色は派手」の方がしっくりくるものです。

 

若紫よりも、紫根色(しこんいろ)

薄紅よりも、臙脂(えんじ)

のように、一色としてはやや落ち着いた色ながら、色の組み合せにコントラストを付けたり、

若紫や薄紅などは小物として効かせるという方が美しいのではないでしょうか。