この作品は、荒々しい色彩が大胆に配置された、野獣派(フォーヴィズム)時代の代表作です。
顔は左右の色が異なって、それぞれ背後の色面と呼応しています。
向って右側の顔は赤く、背後(左)の赤と対応、
顔の中心の緑色の筋は、背景や顔の赤と補色の関係にあるのです。
大胆な配色ながら、これらは決して”感情的”ではなく、”知的”に計算されている点が注目に値します。
しかも、これらの非現実的な色彩が、風景や静物ではなく「人間の顔」に用いられたことが衝撃的なのです。
顔の中心の緑は、背景の強烈な配色と均衡を保っていて、マティスが人物と背景を同等に扱った事がわかります。
黄色と青は補色関係。
赤と緑は補色関係。
顔の色彩、衣装の色彩、背景の色彩がそれぞれ対応しています。
物に特有の色彩という観念から離れ、色彩そのものが対応しあい均衡を保っているのです。
アンリ・マティス(Henri Matisse 1869-1954年) はフランスの画家。20世紀に流行したフォーヴィズム(野獣派)のリーダー的存在であった。
「色彩の魔術師」とも呼ばれ、パプロ・ピカソとともに、20世紀を代表する大画家である。