野獣派の好んだ色彩

アンリ・マティス「緑の筋のあるマティス夫人の肖像」1905年
アンリ・マティス「緑の筋のあるマティス夫人の肖像」1905年

この作品は、荒々しい色彩が大胆に配置された、野獣派(フォーヴィズム)時代の代表作です。

顔は左右の色が異なって、それぞれ背後の色面と呼応しています。

向って右側の顔は赤く、背後(左)の赤と対応、

顔の中心の緑色の筋は、背景や顔の赤と補色の関係にあるのです。

大胆な配色ながら、これらは決して”感情的”ではなく、”知的”に計算されている点が注目に値します。

 

しかも、これらの非現実的な色彩が、風景や静物ではなく「人間の顔」に用いられたことが衝撃的なのです。

 

顔の中心の緑は、背景の強烈な配色と均衡を保っていて、マティスが人物と背景を同等に扱った事がわかります。

 

 

黄色と青は補色関係。

 

赤と緑は補色関係。

 

顔の色彩、衣装の色彩、背景の色彩がそれぞれ対応しています。

物に特有の色彩という観念から離れ、色彩そのものが対応しあい均衡を保っているのです。

 

 

 ンリ・マティスHenri Matisse 1869-1954年) はフランスの画家。20世紀に流行したフォーヴィズム(野獣派)のリーダー的存在であった。

 

「色彩の魔術師」とも呼ばれ、パプロ・ピカソとともに、20世紀を代表する大画家である。