「わかる!色彩検定2・3級問題集」の読者の方から次のような質問を受けました。
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【問題】
次の(A)~(D)の空欄に適切な語句を記入しましょう。
色の(A)は、対象の色と(B)の色との関係によって決まる。
特に互いの色の(C)差が最も大事である。
(D)と黒の配色が最も(A)が高く、
踏切の色や夜中のアスファルトの配色はそのよい例である。
(A)の高い配色は遠くからでも発見しやすい。
【答え】
A:視認性(あるいは明視性)
B:背景
C:明度
D:黄
【読者からの質問】
Aの答えが視認性(あるいは明視性)となっていますが、誘目性ではないでしょうか?
児童の通学帽など、「注意を向けていなくても目に入る」ものだと思ったのですが。
【質問への回答】
まず
「視認性」と「誘目性」の、一般的な考え方の違いについて整理しておきましょう。
□「色の誘目性」について
誘目性とは、文字通り、目を誘う性質のことで、「誘目性の高い色」とは、雑多な色の中にあって、特に注意を向けなくても、目に飛びこんでくる色のことです。
誘目性の高い色の代表例として、郵便ポストの赤があります。
赤は本来、人の目が自然と向く色であり、そのため、見知らぬ街並みで、ポストがどこにあるかを見つけるには、赤が最も効果的です。
また、同じ女性が、真っ赤な服を着た時と、ベージュの服を着た時を想像してみてください。
おそらく、赤い服を着たときの方が圧倒的に、多くの人の視線を浴びることでしょう。
この例からも、赤が誘目性の高い色であることがわかります。
□「色の視認性」について
「色の視認性」は、単色ではなく、「配色」でとらえる点がポイントです。
赤は誘目性の高い色ですが、例えば、黒板(実際は緑色)上の赤チョークの文字が見えづらいことは、よく知られていますね。
つまり、赤はよく目立つ、誘目性が高い色ですが、緑背景では、見えづらく(視認性が低く)、読みにくい(可読性が低い)色になります。
黄についても、黒背景では見やすく、視認性が高いのですが、白背景では見えづらく、視認性は低くなります。
このように、色の視認性は「背景の色」との関係において論じられます。
□さて、質問の
児童の通学帽の黄色について
児童の帽子の「黄色」は、確かに、よく目立つ、誘目性の高い色ですが、帽子やランドセルカバーの色に黄色が選ばれている理由は、誘目性が高いからでしょうか?
もし、そうだとすると「赤い帽子、赤いランドセルカバー」でもよいことになります。
「小学生の帽子やランドセルのカバーが赤」だったら、どうでしょうか?
結論から言うと、「赤」は最も不適切な色の1つです。なぜならば、赤は暗闇では見えづらい色だからです。
帽子や、ランドセルカバーが黄色い理由は、暗くなった時間帯や、特に、雨が降ったアスファルトの道路を子供が歩く場合を想定し、遠くにいる運転手からでも、黄色い帽子の子供たちがいち早く、認識できるからです。
雨に打たれたアスファルトの「黒」には、帽子の「黄」が、もっとも視認性が高く、遠くからでも、その存在がよく見えます(この「遠くからでも、認識できること」が安全色彩の重要なポイントです。そのため、安全色彩には黄色がよく用いられます)。
踏切の「黄」✖️「黒」の組み合わせも同様の理由です。
このように、
視認性と誘目性は、その意味合いにおいて異なっています。
□問題集の問題について
文中に、対象の色と背景の色との関係において決まるという記述があり
「明度差」が最も大切という記述があります。
また、背景の色によって決まるという記述もあることから
「色の視認性」が答えであることがわかります。